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農業を手伝いたい人と農家を繋げる「アグリサポート」の魅力を取材しました

農業の繁忙期に人手が足りないと悩んでいる農家の方と、農作業を体験してみたいという方を繋げる取り組み、「アグリサポート」をご存知ですか?長野県松本市では、行政が窓口となり、農家と協力会員をつなぐアグリサポート事業を25年に渡って続けています。

 今回は、この事業に参加している果樹農園を訪れて、市民から募った協力会員の方が実際にどんな作業をしているのか、農家さんと協力会員さんそれぞれどんな思いで活動されているのかを取材してきました。

目次

 松本市のアグリサポート事業とは

 

松本市の「アグリサポート事業」は、農繁期の労働力不足を補いながら、農作業支援を通して市民と農家の交流を図ろうと、1996年にスタートしました。春と秋の年に2回、それぞれ6日間ほどの期間で募集され、協力会員は松本市内の今井地区・梓川地区のりんご農園で作業を行います。

 この事業の根底にあるのが、「結い」と呼ばれる助け合いの精神です。「結い」とは、農村社会に古くからみられる慣行で、もともとは農家同士が相互に労力を分かち合うものでした。農繁期になると、周辺農家が集団で作業にあたり、順にそれぞれの畑をまわります。こうすることで、地域のすべての畑の作業を地域の農民全員で負担。「忙しい時はお互いに協力して助け合おう」という考え方が、結いの精神として現代にまで受け継がれているのです。

 アグリサポートへの応募条件は、以下の通り。

・この結いの気持ちで農家の支援ができること、

・日中7時間ほど野外で立ったりしゃがんだりの作業ができること、

・自家用車での移動ができること、

・根気強く細かい作業ができること、の4つ。

作業を行った協力会員には、農家から謝礼(県の最低賃金が目安)が支払われます。

協力会員はどんな作業をするの?

 

協力会員が行う作業は、季節によって異なります。春季には、生りだした小さな実の中から余分な果実を取り除いていく、「摘果」と呼ばれる作業を行います。摘果をすると、残された果実に栄養分が集中して、より美味しい実が育つと言われています。そして、秋季には「葉摘み」と「玉回し」のお手伝い。葉摘みは、果実の周りにある日光を遮る葉を取り除く作業で、玉回しは果実を反転させて果実全体に均等に日光が当たるようにする作業です。どちらも、美しくりんごを色づかせるため欠かせません。

取材して分かった、アグリサポートの魅力!

爽やかな秋晴れの9月中旬、実際にアグリサポート事業に参加されている、今井地区のりんご農家・田中武彦さんのりんご畑へ伺いました。田中さんのりんご畑は、広さは2.5ヘクタール(25000㎡)ほど、およそ30種類のりんごを育てています。田中さんは、代々受けついできた果樹農家で、ご両親が高齢になったことをきっかけにアグリサポート事業へ参加するようになったといいます。

「りんごは年間を通して様々な作業がありますが、特に忙しい時期にパッと手伝いに来てくれる協力会員さんたちの存在は、とてもありがたいです。休憩の時には、ここで育てているりんごを食べてもらったり、農業の話題で会話を楽しんだり…いい交流にもなっています。」と田中さんはおっしゃいます。

(写真はりんご農家の田中武彦さん)

 この日は、松本市内から5名の協力会員が参加して、葉摘みの作業にあたっていました。協力会員のみなさんは、列になっているりんごの木の右側と左側に分かれて、手前から奥へと順に進んでいきます。色づいてきた果実を一つ一つ確認し、果実の周辺の葉を手で摘出。果実のなっている高さに合わせて、しゃがんだり踏み台を使ったりしながら、葉摘みを行っていました。

アグリサポートに参加して3年目という女性は「秋の気候は良いですし、りんご畑の中で過ごすのは本当に気持ちがいいです。近年はコロナ禍のため家で自粛している時間も長いので、外で作業ができることが嬉しいです。」と話します。

 協力会員の常連という男性は「定年してからアグリサポートの協力会員になりましたが、百姓をしていた実家で過ごした幼い頃のことを思い出しますね。」と微笑みます。

 また、今年初めて参加された女性は「面白そうだと思い、初めて参加しましたが、青空の中で集中して作業ができて楽しいです。秋だけでなく春の作業にも参加してみたいと感じました。」とアグリサポート事業の作業に好印象のご様子。

 「秋は爽やかな空が広がっている中で、また春は若葉が繁り鳥の鳴き声が聞こえる中での作業。ほっと心が安らぎます。普段とは違う環境での作業で大自然を感じられるのが、アグリサポートの魅力だと思います。」そう話すのは、10年あまりアグリサポートに参加されている女性です。

いずれの方も、広々とした農園の中で自然を感じながら作業をすることに心地よさを感じているようでした。

 

持続的な就農のきっかけとなるケースも

アグリサポートが、持続的な就農へのきっかけになるケースもあります。田中さんの農園でも、アグリサポートの協力会員として訪れた方の中で、熱意があり手際も良い方へは個別に声をかけて、ほかの時期の作業にもお手伝いに来てもらっているそうです。農家にとっては、より安定的に農作業が行えるようになりますし、就農したい方にとっても技術の向上や収入の増加へと繋がります。

 田中さんは「アグリサポートはいい人材を見つけるチャンスでもあります。毎年、景気の動向や天候、一昨年ほどからは新型コロナウイルス感染症の影響などもあって、人手の確保は農家にとって大きな課題です。今後も、アグリサポートには参加していきたいと考えています。」とお話ししてくださいました。

行政やJAによるそのほかの就農支援

松本市では、年2回りんご農家への支援となる「アグリサポート事業」のほかに、さまざまな農家への求人を紹介する「デイリーサポート事業」も行っています。デイリーサポート事業は、りんごに限らず、果樹や野菜の繁農期に協力してくれる市民を募集する取り組み。農家からの希望に応じて募集されるため、作業内容や期間、場所、求人数などは時期によってさまざまです。2021年9月末現在では、ネギの管理やりんごの葉摘み、加工用ぶどうの収穫などが募集されていました。

 ほかにも、農業における労働力を補うための支援として、松本市ではハローワークやシルバー人材センターへの登録なども推奨しています。

 また、JA松本ハイランドでも、農業の人手不足解消のための取り組み「労働銀行」を実施しています。労働銀行とは、JA松本ハイランド営農企画課が窓口となって、組合員の農家への求人をとりまとめるもの。現在もりんごの収穫やネギの皮むき作業など、アルバイト募集がHPなどで呼びかけられていました(2021年9月末時点)。

まとめ

松本市の行っているアグリサポート事業は、りんご農家の繁忙期(春と秋)に農業をやってみたい協力会員を募る取り組み。労働力不足の解消、人材の確保と農家にとっても良いポイントがたくさんあり、協力する市民にとっても気分転換や収入の獲得などメリットが多数。実際に協力会員からも「作業が楽しい、また参加したい」との声が聞かれました。また、アグリサポートのほかにも、人材の確保を目的とした農家への支援は、デイリーサポート、労働銀行などがあります。農家のみなさんも、就農したいみなさんも、このような支援制度を活用しながら、ご自身に合ったよりよい農業のスタイルを探してみてはいかがでしょうか。

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