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農業と行政の関係とは〜前長野県農政林務委員会 委員長 石和大さんインタビュー

目次

石和さんが考える農業について

米作文化に基づく日本

私は神主でもあるので、それが私の生き様の根本であると思います。
日本は弥生時代以降、米作が始まり、豊葦原瑞穂の国という、水に恵まれた土地の中で水田農業を中心に、農業というものが進化してきました。
なので、米作・米食文化は日本の根底にあると思います。
お米を作る上で必要な水田は、いわば自然のダムのようなものであり、自然と共存する上で必要なものであると思います。
だんだんと日本人がお米を食べなくなったり、食生活に変化が生じるにつれ、田んぼもそんなに必要でなくなり、宅地造成をするなど色々な形で変わってきました。
しかしそれによって水害が多くなってきた、というのもおそらく一つの現実ではないか、と私は思っております。
なので、水田すなわち米作文化は、環境を維持するためにも守っていかなければならないと感じています

これからの農業の形

長野県は中山間地が多く、広い田んぼがあまりないですが、他県の盆地や平野をみるとスマート農業という形ができているところがあります。長野県でも当然スマート農業が発展する可能性はあります。これからの人口減少社会、人手不足が懸念されますが、そういったところを機械が補うことで、これからの農業はさらに前に進んでいくのではないかと思っています

スマート農業とは別に、自家用の農作物を作る家庭菜園や、マイクロ農業も引き続きやっていく必要があると思います。なぜならそれが長野県の長寿を支える要素であると思うからです。自分の家に畑や田んぼがあって、そこで農作物を作り、収穫の喜びを感じながら食べる、ということによって健康が保たれていくと思うんですね。

集約化される未来型の農業と、マイクロ農業や家庭菜園などの小さな農業が並立していくのが面白いのではないかと思います。長野県には、家庭菜園などの小さな農業の文化が根付いていますので、長寿文化を支えながら農業の未来も切り開いていく、そういうことができるのではないかと思います。

石和さんご自身の農業体験

僕が子供のころは、おじいさんが農業をやっていてアスパラを作っていました。
時期になると、「ちょっと取りに行ってこいよ」と言われて、鎌を持って畑に行きました。
鎌のところに印が付いていて、「この長さに達していたら切っていいよ」ということで、それを採ってざるに入れて持って帰ってきたり、休みの日なんかは集出荷場に持って行って、束にしてテーピングするなんてこともしました。

子供の頃はよく農作業していましたね。
鍬の使い方なんかも結構うまいんですよ。
ネギ植えて、畝立てを鍬でやって、なんてことを子供のころに結構やっていましたからね。割と上手なんですよ。笑

農業の現状を踏まえた上での、今後の農業に対する思い

今やっている農家さんたちは、割と経営が安定したり規模が大きくなってきているところが多いと思います。東御市にしてみると、田んぼにしても園芸農業にしても、後継者がいるところが案外あります。なので、いい波がきているのではないかと思っていますね。ただ、いずれ高齢化によって引き継ぎの手が途絶えてしまうこともあるかもしれません。そこは新規就農の部分が支えていけるように、里親制度みたいなマッチングが必要になってくると思います。
若い世代が今の農業文化を引き継いでいけるかどうかが焦点ですね。

ただ、日本人というのは農業に興味を持ちやすい、そういう特性があると、最近思います。
私も55歳になりましたが、そんな歳になると少し農業やってみようかななんて気持ちになるんですよ。笑
そういう人って結構いると思うんですよね。
色んな人が土いじりのようなものに関わっていく傾向にあると思いますから、引継ぎに関してはあまり心配いらないのかもしれません。

農業が今後日本の根幹的産業として発展していくために必要なこと

まずは省力化が必要だと思います。
農業が重労働であるというイメージを払拭するためです。
そのためにはスマート農業を中心とした省力化によって、ものづくりを楽しむことができるようにする必要があると思います。さらにはそこからできた作物が消費者に届き、その消費者の笑顔を直接みることができる、そういった生産者と消費者が近い距離にある農業が出来上がっていけばなおいいと思います。
日本では農事組合法人や直売所などが、生産者と消費者の距離が近い具体例として上げられると思います。
直売所でいえば、東御市にある雷電くるみの里は相当うまく機能していますね。他にも三重県にあるモクモクファームというところは6次産業化が進んでおり、全国から視察が来ています。そういうところが今後、距離が近い農業を推進していく上でヒントになってくるのではないかと思います。
しかし、高齢化が進んでいるということは明らかであるので、多様な農業の推進だけでなく、未来に繋げられる農業を目指す必要があります。

様々な情報を利用して、農家と次に担う人たちを繋げていく役割が必要であり、それはもちろん県や市町村でもやります。しかし、もっと直接的な販売ノウハウの共有や未来型の農業を推進するための計画などは、農業に関係する企業が担っていけるようになると、いいのではないかと思います。

編集後記〜よりよい農業の環境づくりのために、尽力してくれているのが農政林務委員会。

お話を聞いていると、確かに昨年度は、波乱に満ちた一年であったと思いました。
個人レベルでは到底対策が取れないようなことだからこそ、県として対策を講じ、環境整備に努めてくれる。
そして、引退する農家が心置きなく離農でき、新規就農者が農業に挑戦するチャンスを平等に与えてもらえるよう、制度などを通してサポートしてくれる。
なかなか触れることのない県の農業政策に関するお仕事ですが、今回その内容に少し触れることができたインタビューとなりました。

また、石和さんの考える ”農業” についてもお聞きしました。神主としての石和さんの価値観や、農政林務委員会に従事していた経験などを踏まえた上で、生産者と消費者の距離がより近くなるような農業の実現や、これからを担う人たちが様々な環境で携わることのできる農業の推奨など、農業の未来への石和さんご自身の見解についてお聞きすることができ、有意義な時間となりました。

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