元自衛官が挑む「農業自衛隊」国防のスキルを食料安保の最前線へ

2025年1月、千葉県多古町。冬の田んぼで、背中に「農衛」と刻まれたTシャツを着た男たちが汗を流す姿が注目を集めている。彼らの名は「農業自衛隊」。退職自衛官のセカンドキャリアとして農業就農を支援する、新しい組織。

この動きは、日本が抱える「2つの国家的課題」を同時に解決する可能性を秘めています。

一つは、毎年約8,000人にのぼる自衛官の「再就職難」。もう一つは、平均年齢68歳を超え、危機的状況にある「農業の担い手不足」。この両者を結びつける画期的な試みが、今まさに動き出しました。

なぜ今、「退職自衛官×農業」なのか？ 3つの必然性

1. 「若年定年制」が生む、働き盛りの人材

自衛官の多くは50代半ばで定年を迎える。（若年定年制）

一般社会では「定年」と呼ばれる年齢でも、彼らの体力・気力は充実しており、その後20年近く第一線で働けるポテンシャルを持つ。農業界にとって、この「若く、屈強なシニア」は喉から手が出るほど欲しい人材です。

2. 任務で培ったスキルが直結する親和性

農林水産省の調査でも、自衛隊のスキルは農業現場で極めて高く評価されています。

• 強靭な体力と持久力：
  過酷な屋外環境や長時間作業への適応力。
• 特殊車両の運転・整備技術：
  トラクターやコンバインなど、大型農機の操作・メンテに即応用可能。
• 組織運営と規律：
  計画的な工程管理、チームワーク、そして何より「やり遂げる責任感」。

3. 「国を守る」使命感の継承

「自衛隊で培った根性は農業にぴったり。国防の次は、食料安保です」
青森県弘前駐屯地でのセミナーで、元自衛官の佐藤仁さん（56歳）はそう語った。彼らにとって農業は単なる転職ではない。「食料自給率の向上＝新しい国防」という使命感の延長線上にあることが、最大のモチベーションとなっている。

「農業自衛隊」の全貌とロードマップ

陸・海・空に続く「第4の自衛隊」とも呼ばれる彼らの活動は、単なるボランティアではなく、持続可能なビジネスモデルを目指しています。

活動概要

項目	内容
拠点	千葉県多古町
主要メンバー	現役自衛官、会社員ら5名が中心となり発足
当面の目標	2026年春のコメ生産開始
長期ビジョン	2035年までに年間100人の退職自衛官就農を実現

官民連携の広がり

クボタ等の農機メーカーと連携し、農作業受託事業も展開予定。また、2025年6月からは農水省と防衛省が正式に連携を強化するなど、国を挙げたバックアップ体制も整いつつあります。

日本経済新聞：退職自衛官を農業界へ 来春コメ生産 作業受託でクボタと連携
農林水産省：「新規就農相談センター」で全国の就農支援情報を検索可能
農林水産省：農林水産業及び自衛隊における人材確保の取組に係る申合せの締結について
防衛省：退職自衛官向けには防衛省のキャリアセンターでも農業情報を提供中

現場のリアル：立ちはだかる「初期投資」の壁

期待が高まる一方で、現実は甘くない。現在、退職自衛官のうち農業を選ぶのはわずか1%。
特に大きな障壁となっているのが、数百万～一千万円単位のコストがかかる「農機具の初期投資」です。退職金があるとはいえ、未経験の分野に多額の資金を投じる不安は大きいでしょう。

民間サービスができる「後方支援」とは

この課題に対し、私たち民間企業ができることは何でしょうか。
例えば、私たち「ノウキナビ」のような農機具ECプラットフォームも、微力ながらその一助になれるかもしれないと考えています。

注目すべきは、元自衛官の方々が持つ「高い整備スキル」。
戦車やトラックを整備してきた彼らにとって、農機のメンテナンスはお手のもの。彼ら自身の手で整備ができるなら、必ずしも高額な新品を揃える必要はないはずです。

• 中古農機の活用：
  初期費用を抑えつつ、自身の目で良し悪しを見極めて導入する。
• 部品の供給：
  私たちのようなECサイトが「純正部品」を確実にお届けすることで、彼らは自前で修理し、ランニングコストを大幅に下げることができる。

彼らが前線（農業現場）で力を発揮できるよう、必要な物資を届ける。いわば「農業のロジスティクス（後方支援）」として、既存のECサービスが役立つ場面は多いでしょう。

SNSで広がる共感：「令和の屯田兵」への期待

X（旧Twitter）では、産経新聞や日経新聞の報道を機に「#農業は国防」のハッシュタグが拡散。「現代版の屯田兵だ」「体力のある彼らこそ適任」といったポジティブな声が溢れています。

一方で、「精神論だけでは続かない」「経営のプロによるサポートが必須」といった冷静な議論も交わされており、社会の関心の高さがうかがえます。

よくある質問

まとめ：食料安保は、誰かに任せる問題ではない

「農業自衛隊」の挑戦は始まったばかり。2035年に年間100人の就農という目標が達成できるか、それはこれからの支援体制と、私たちの理解にかかっています。

「国防の次は、食料安保」

この言葉は、元自衛官だけでなく、食を享受する私たち一人ひとりに向けられたメッセージかもしれない。この新しい潮流を、社会全体で育てていく時が来ています。

参考：農業自衛隊 | 守ってきた誇りを新たなステージへ―― 退役自衛官の経験と情熱が農業を支え、地域と未来の食を共に守る。 人手不足に苦しむ農業現場に力を注ぎ、 日本の食と地域を耕す新たな使命を担うプロジェクト

「装備品」の調達・補給は、私たちにお任せください

私たちノウキナビは、これから日本の食料安保を支えようとする元自衛官の皆様、そして新規就農者の皆様を全力でバックアップいたします。

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