ジャガイモ栽培の基礎知識(前編)~北海道の生産地事例をご紹介!~

公開日: : 最終更新日:2022/01/07 旧ツチカウ

ジャガイモは、秋の味覚の代表格と言っても過言ではないほど日本人に親しまれている作物です!

別名“馬鈴薯(ばれいしょ)”とも呼ばれ、日本国内での大規模生産・加工流通・貯蔵技術が確立されています。

 

最近では、収穫したてではなく、何年も貯蔵されたものが売られていることもあり、ジャガイモ業界でも革命が起こっています!

 

そんなジャガイモですが、どのような栽培体系でつくられているかご存知でしょうか?

今回は、北海道のジャガイモ栽培に関することを中心に解説していきます。

ジャガイモの起源と特性

ジャガイモはどこからやって来た!?

ジャガイモはどんな作物の仲間なの?

と質問をされたら、みなさんどのように答えるでしょうか。

サツマイモやヤマイモと同じ分類でしょうか?

 

実は、トマトやトウガラシと同じナス科の中のナス属に属しています。

 

ちなみに、同じナス科ナス属のナスのゲノム解析をしたところ、ジャガイモが持つ遺伝子と約84%の遺伝子グループが同じものであることがわかったという研究結果もあります。

 

ジャガイモの起源とされているのは、中南米~南米のアンデス地域と言われています。

中央アンデス地帯では、少なくとも7,000年前に栽培化されたと考えられています。

    

###こうして日本での栽培が広がった!

ジャガイモが日本へ伝来した時期については諸説がありますが、17世紀にオランダ人によって長崎へもたらされたという説があります。

 

その後、長崎から日本各地へ広がり栽培が始まったとされていますが、国内では17世紀~19世紀にかけて数々の飢饉がありました。

その際に、冷害に強いジャガイモが救荒作物として広まっていったと考えられています。

 

今回ご紹介する北海道のジャガイモ栽培は、1704年~1710年ごろに道南の瀬棚地方で始まったとされています。

【参考】ジャガイモ事典 財団法人いも類振興協会、農研機構 ナスの全ゲノムを解析-世界初の成果、新品種開発に励み-

https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/files/vt_press_nasugenome_20140908.pdf農林水産省 農産物たんけん隊 ジャガイモ 「どこからきたの?」

    https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/zyaga/01.html、第7回特別展ばれいしょ 美幌農業館・美幌博物館 9項

ジャガイモはどうやって増える?

実際の栽培についてお話する前に、生物学的な特性について解説をします。

家庭菜園でジャガイモを育てたことがある方はご存じかと思いますが、私たちが食べている食用部分がそのまま種になります。

ジャガイモは塊茎(かいけい)と呼ばれる、茎が生長した器官に栄養を蓄えます。

この塊茎が、可食部分であり、種いもです。

 

ジャガイモを調理する際は、芽の部分を取りましょう!ということは、小学校の家庭科の授業で習った基本的な知識かと思います。

調理の際には取ってしまうこの芽の部分は、生育環境が整うと生長し、次の世代の繁殖準備を開始します。

収穫直後のジャガイモは休眠状態にありますが、貯蔵する温度や湿度、品種によって休眠期間が異なります。

そのため、収穫したジャガイモを食用とするのか、それとも種いもとして使用するのかによって貯蔵方法を変える必要があります。

【参考】新版 作物栽培の基礎 社団法人農山漁村文化協会

ジャガイモの栽培管理

まずは種いもの準備から

前段が長くなりましたが、ここからは栽培管理について解説していきます!

 

まずは、種いもの準備をします。

北海道の生産地の場合、大規模栽培の体系が確立されているため、前年度から各農家が使用する種いもの必要量を取りまとめしていることが多いようです。

 

生産者さんが行う作業としては、まず春先に前年度に立てた栽培計画の通りに作付けができるか再度検討します。

JA経由で種いもを供給している生産地では、遅くとも4月下旬ごろまでには種いもの引き取りを行い、生産者ごとに植え付け準備に入ります。

 

種いもは倉庫の冷蔵庫などで保管されていることが多く、先ほど述べたように休眠状態にあります。

休眠状態の種いもをそのまま植え付けすると、芽が出るまでに時間がかかってしまう可能性があります。

 

そのため、浴光催芽(よっこうさいが)という方法を行います。

浴光催芽は、植え付けの3週間ほど前から倉庫の外へ出すなどして、種いもに温度と光があたるようにします。

 

その際に気をつけたいことは、

①雨が当たらないようにすること、

30℃以上の高温と直射日光は避けることです。

 

次に、浴光催芽した種いもをそれぞれ2つ~4つ切りにします。

種いもは、一片40g程度あれば生育や収量に問題ないとされており、各片に芽が最低でも2つ入るように切ります。

【参考】新版 作物栽培の基礎 社団法人農山漁村文化協会

大きな種いもを植えれば、1株当たりの収量が多くなるというわけではありません。

限られた種の節約という意味でも、種いもを切断して使用することが望ましいです。

さらに、切断面を乾燥させてコルク化するとより病気にかかりにくくなります。

【参考】北海道の作物管理 水稲、畑作物、果樹の栽培マニュアル 株式会社北海道協同組合通信社

ようやく植え付け!

ここまで準備をしたら、さっそく植え付け作業に入っていきます。

圃場の地温(ちおん)が10℃以上で乾燥している環境であれば、植え付けができます。

北海道では、4月下旬から5月中下旬にかけて植え付け(播種)を行います。

 

植え付けで使用する機械は、ポテトプランターといいます。

株間は30㎝程度で、畝幅は72㎝~75㎝が適切です。

これは、栽培途中の管理で培土(ばいど)を行いますが、畝幅が狭い場合はいもが緑化してしまったり、一粒が小さくなってしまったりするためです。

 

また、種いもをあまり深い場所に植えてしまうと、地上部に芽が出るまで時間がかかってしまいます。

そのため、種いもを植えたあとは3~5㎝の覆土(ふくど)をするといいとされています。

【参考】北海道の作物管理 水稲、畑作物、果樹の栽培マニュアル 株式会社北海道協同組合通信社

植えつけ後は除草と培土をします!

植えつけをした後は、その気象条件次第で芽が出るタイミングが変わってきます。

芽が出ることを萌芽(ほうが)といいます。

 

萌芽をする前までに、除草剤を散布して徹底的に雑草を抑える必要があります。

有機栽培の場合は、除草剤も農薬も使用しませんが、北海道のような大生産地では除草剤なしでは到底管理が追い付かないのが現状です。

ジャガイモは、生育が進むにつれて地上部の茎が大きく伸びて葉が茂るため、圃場内に入って雑草を処理することが難しくなります。

 

萌芽をしたあとは、中耕(ちゅうこう)と呼ばれる作業を行います。

中耕を行う効果としては、除草と土寄せの2つがあります。

【参考】新版 作物栽培の基礎 社団法人農山漁村文化協会

 

萌芽から3週間ほど経過したら、本培土(ほんばいど)という作業を行います。

培土を行うことによって、いもの周囲の温度が、地上部の温度条件による影響を受けにくくなります。

この時期から、大きく肥大していくジャガイモにとって、低温にさらされることは様々な面でマイナス要因になります。このときの培土の高さは25㎝程度が望ましいとされています。

【参考】北海道の作物管理 水稲、畑作物、果樹の栽培マニュアル 株式会社北海道協同組合通信社

病害虫の防除もしっかりと!

萌芽してから1か月ほど経過すると、疫病(えきびょう)という主要病害の発生が懸念される時期に入ってきます。

疫病は、19世紀のアイルランドで食糧難が発生した要因にもなった病害です(ジャガイモ飢饉)。

疫病の防除には、薬剤散布が最も効果があるとされています。

 

また、そうか病(塊茎の表皮にかさぶた状の病斑ができる病害)の発生も、ジャガイモ栽培では多く見受けられます。

この病害は、種いもを殺菌剤で消毒することと、土壌のpHを調整することで発生が抑えられることがわかっています。

【参考】北海道の作物管理 水稲、畑作物、果樹の栽培マニュアル 株式会社北海道協同組合通信社

待ちに待った収穫!

ジャガイモの茎葉はどこへいく?

ジャガイモは、枯ちょう期(こちょうき)を迎えると自然に茎葉の部分が枯れてきます。

近年は、薬剤による枯ちょう処理を行う生産者が増えてきています。

茎が枯れて10日ほど経過したら、ようやく収穫できる状態になります!

巨大な収穫機ポテトハーベスタ!

収穫作業は、ポテトハーベスタという機械を使って行います。

こちらの機械はいくつもの種類があり、詳細については次号(後編)にて解説しますが、ここで少しその作業について見てみましょう。

 

ハーベスタは、一畝ずつジャガイモを掘りながら進んでいきます。

機械の上に人が乗り、机上選別(きじょうせんべつ)という作業を行います。

選別では、腐ったいもや石、緑化したいもなどを取り除いていきます。

これが、非常に手間のかかる作業で、スピード勝負になります!

規格内に入ったジャガイモのみが、大きなコンテナに入り工場へ持ち込まれます。

今日はどんなジャガイモ料理にする?

このような過程を経て、生産者のもとでつくられたジャガイモがみなさんの食卓に届けられています。

ジャガイモは、とにかく調理方法も豊富で、なんといっても長期保存が可能なとても優秀な食材です。

今回、解説できなかったジャガイモの様々な用途(加工用やでんぷん原料用)については、次の記事でお伝えします!

以上、ジャガイモへの気持ちがやまない記事を読んでいただき、ありがとうございました!

 

 
 

あぐりちゃんこ

投稿者:k.Nishimura

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