【自己流は危険!】安全で正しいチェンソーの目立て|基本を徹底解説

「なんだか最近、チェンソーの切れ味が悪いな…」
「切れないことはないけど、木くずが粉っぽいし、切断に時間がかかる…」
そんな経験はありませんか?
その症状、ソーチェン(刃)が切れなくなっているサインです。
切れ味の悪いチェンソーを使い続けることは、作業効率が落ちるだけでなく、重大な事故につながる危険性を孕んでいます。
この記事では、自己流の目立てで起こりがちな危険を回避し、安全で本当に「切れる」状態を維持するための正しい目立て方法を、基本の理屈から徹底的に解説します。
この記事では、以下の3つの状態をゴールとして、分かりやすく解説を進めていきます。
- なぜ目立てが必要なのか、その理屈を理解している
- 正しい道具を使い、安全に目立てを行う手順がわかる
- 新品のような切れ味を自分の目立てで復活させることができる
今回は、多くのプロも愛用するオレゴン社の「チェンソーメンテナンスキット」を例に、具体的な手順を見ていきましょう。
はじめに:その目立て、本当に合っていますか?
なぜ、自己流の目立ては危険なのでしょうか?
それは、目立てが単に「刃を鋭くする作業」ではないからです。
間違った方法で行うと、主に3つの危険を引き起こします。
- キックバックのリスク増大:刃の角度や高さを間違えると、刃が木材に食い込みすぎてしまい、チェンソーが手元に激しく跳ね返る「キックバック」という現象が起こりやすくなります。これはチェンソー事故の主要な原因です。
- 作業効率の極端な低下:切れない刃は木材の繊維を断ち切ることができず、ただ表面を削るだけになります。結果、腕力に頼ることになり、無駄な体力と時間を消耗します。
- 本体や部品へのダメージ:切れない刃で無理に押し付けると、エンジンやガイドバー、ソーチェンそのものに過度な負担がかかり、機材の寿命を縮める原因となります。
正しい目立ては、最高のパフォーマンスを引き出すだけでなく、あなた自身を守る最も重要な安全対策なのです。
1.【準備編】道具選びが成功の9割!必須アイテムと安全装備
良い仕事は、良い道具から。ハスクバーナの「目立てキット」は、必要なものがコンパクトにまとまっているだけでなく、初心者の方でも迷わず使える工夫が詰まっています。

- コンビゲージ:これこそがハスクバーナのキットの心臓部!カッターを研ぐときの「角度」と、デプスゲージの「高さ」という、目立てで最も重要な二つの要素を、このたった一つのツールで確認できる優れものです。難しそうな角度合わせも、これさえあれば迷いません。
- 丸ヤスリ:カッターの刃を研ぐための、メインのヤスリです。
- 平ヤスリ:コンビゲージとセットで、デプスゲージの高さを調整するのに使います。
- ヤスリハンドル:ヤスリに取り付けるグリップです。これを付けるだけで、グッと握りやすく、安定した作業ができますよ。
★ワンポイントアドバイス★
目立てキットは、お使いのソーチェンの種類(品番やピッチ)によって、適合するヤスリの太さが決まっています。
購入する際は、ご自身のチェンソーの取扱説明書などでソーチェンの種類を確認し、それに合ったキットを選ぶようにしてくださいね。
安全のための装備
- チェンソーを固定する道具(バイス):作業中にチェンソーが動くと非常に危険です。ガイドバーをしっかりと固定できるバイス(万力)があると、作業の安全性と精度が劇的に向上します。
- 保護メガネ・手袋:ヤスリがけで発生する細かい鉄粉から目や手を守るために必ず着用しましょう。
2.【知識編】切れ味の心臓部!ソーチェンの仕組みを完全図解
やみくもに研ぐ前に、なぜ切れるようになるのか、刃の構造を理解しましょう。
ソーチェンの刃(カッター)は、主に2つの部分から成り立っています。

- ① 上刃(うわば)と横刃(よこば):木材を削り取る「刃」の部分です。上刃がカンナの刃のように木材の繊維を水平に切り、横刃が垂直に断ち切ることで、きれいなチップ(木くず)が生まれます。目立てでは主にこの部分を研ぎます。
- ② デプスゲージ:カッターの手前にある、小さなツノのような部分です。これがブレーキ役となり、刃が木材に一度に深く食い込みすぎるのを防ぎます。この高さが、安全性と切れ味を両立させる上で非常に重要です。
なぜ「正しい角度」が重要なのか?
ファイルホルダーには30°などの線が引かれています。
この角度は、刃が最も効率よく木材の繊維を断ち切れるように設計されたものです。
角度が浅すぎれば滑ってしまい、鋭すぎれば刃こぼれしやすくなります。
ファイルホルダーは、正しい角度を知識や経験がなくても維持してくれる優れた道具です。
3.【実践編】さあ、やってみよう!正しい目立ての5ステップ
それでは、実際にオレゴン社のキットを使って目立てを行ってみましょう。
ステップ1:チェンソーの固定と基準刃のマーキング
まず、バイスなどでガイドバーをしっかりと固定します。
次に、目立てを始めるカッターを一つ決め、マジックなどで印をつけます。
これを「基準刃」とすることで、どこまで研いだか分からなくなるのを防ぎます。
ステップ2:コンビゲージをカッターにセットする
ここがハスクバーナ式です。
コンビゲージには矢印が刻まれており、チェンソーの回転方向(刃が進む方向)に矢印が向くように、カッターの上に置きます。
ゲージの突起が、カッターとその後ろの刃にしっかりフィットするように乗せてください。
ステップ3:「押すときだけ力を入れる」研ぎ方の基本動作
ハンドルを付けた丸ヤスリを、コンビゲージのローラーの上に乗せます。
あとは、両手でヤスリを水平に持ち、息をふーっと吐きながら、まっすぐ前に「押して」研ぐだけ。
ローラーが転がるので、とてもスムーズにヤスリを動かせるはずです。

「シャリッ、シャリッ」という気持ちのいい音がすれば、うまく研げている証拠。
一つの刃につき、2〜3回研げば十分です。
なのは、全部の刃を同じ回数だけ研ぐこと。「今回は3回」と決めて、最後まで守りましょう。
ステップ4:全ての刃を均一に研ぐ
基準刃が終わったら、一つ飛ばして次の同じ向きの刃を同じように3回研ぎます。
片側の刃がすべて終わったら、チェンソーの向きを180°変え、反対側の刃も同じように基準刃を決めてから3回ずつ研いでいきます。
ステップ5:デプスゲージの測定と調整(3〜5回に1度)
目立てを3〜5回行ったら、デプスゲージの高さをチェックします。
今度はコンビゲージの、デプスゲージ専用と書かれた部分を使います。
ゲージをカッターに乗せ、もしデプスゲージがゲージの隙間から突き出ていたら、平ヤスリでゲージの上面と平らになるまで優しく削ります。
ゲージが定規とヤスリガイドを兼ねてくれるので、とても簡単ですよ。
削りすぎは絶対にNGです。
【動画でイメージを掴む】
4.【トラブル解決編】これって失敗?よくある疑問と解決策Q&A
5. まとめ:正しい目立ては、安全と効率を両立する最高のメンテナンス
今回は、チェンソーの正しい目立て方法を、その理屈から具体的な手順まで解説しました。
- 自己流は危険!正しい知識が安全につながる
- 専用キットを使えば、初心者でも正確な目立てが可能
- 「カッター」と「デプスゲージ」の両方の管理が重要
- 給油のついでに目立てを習慣化しよう
最初は難しく感じるかもしれませんが、正しい手順で2〜3回もやれば、誰でも必ず慣れてきます。正しく目立てされたチェンソーの、木に吸い込まれるような滑らかな切れ味は、一度味わうと病みつきになるはずです。
この記事が、あなたの安全で効率的なチェンソーライフの一助となれば幸いです。