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新総裁の決意と挑戦 食料自給率100%が問う日本の構造改革

2025年9月、激しい論戦となった自民党総裁選挙で、高市早苗氏が新総裁に選ばれました。史上初の女性総裁が誕生する見通しです。

高市新総裁が掲げるスローガンは「挑戦で拓く新しい日本」。不安定な世界情勢の中、日本が自立し、困難に負けない強い国を目指すという強い意志が込められています。その核となるのが「国力(National Power)」の強化です。

外交・安全保障で最も保守的な考えを持つ高市氏が選ばれた背景には、前政権下での選挙敗北や世界情勢の不安定化に対する、自民党内の強い危機感があります。この選択は、目先の経済的な効率性よりも、国家の主権と自律性を最優先しようとする、大きな政治の流れを示しています。新総裁の政策は、外交、経済、資源のすべてを「安全保障」という視点で見直し、長期的な視点で日本の強さを追求する、新しい時代の始まりを告げています。

目次

安全保障がすべての土台:「挑戦」の本当の意味

高市新総裁が目指す「新しい日本」は、経済、防衛、外交の3つが互いに連携し、国の力を高め合う仕組みで成り立っています。食料安全保障政策も、この大きな戦略の一部として考える必要があります。

経済・防衛・外交の好循環

高市氏が掲げる「力強く成長するニッポン」は、科学技術への積極的な投資を通じて、日本を再びテクノロジー大国にすることを目標としています。経済力を高めることは、国民生活を豊かにするだけでなく、国の防衛力を支える土台となります。そして、強い経済と防衛力があるからこそ、国際社会での日本の発言力(外交力)も増していきます。この「経済・防衛・外交」の好循環こそが、国全体の力を底上げする核となる戦略です。

さらに、成長のエンジンを東京などの大都市だけでなく、地方にも広げることで、全国の地域が活気づくことを目指しています。これは、後で説明する農業改革の重要な土台にもなり得ます。

エネルギー政策の抜本的見直し

食料安全保障と並んで、新政権が大きく方針を変えるのがエネルギー政策です。これまでの政策は、安全性、安定供給、経済性、環境適合(S+3E)のバランスを重視してきました。しかし、新政権では「国力」という視点から、エネルギー安全保障が最も重要な課題と位置付けられます。

日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っており、エネルギー供給は常に不安定なリスクを抱えています。新総裁が原子力や核融合を「強力に推進」するのは、単に脱炭素のためだけではありません。日本が自国のエネルギー供給をコントロールできるようにし、技術的な優位性を確保することで、国家の主権を守ることが真の狙いです。

具体的には、既存の原発を速やかに再稼働させ、運転期間も延長します。さらに、次世代の小型革新炉(SMR)の開発・実用化も目指します。これは、エネルギー供給を世界の政治的リスクから切り離し、経済安全保障の一部として考える強い意志の表れです。

新総裁が掲げる「食料自給率100パーセント」という目標は、単なる農業支援策ではありません。「自らの手で守り抜くニッポン」という国家安全保障戦略を象徴する、大胆な挑戦です。

なぜ「100%」なのか?

この政策は、食料安全保障を、世界的な食料価格の高騰や気候変動といったリスクに対する、国家的な「保険」として位置付けています。特に、輸入に大きく頼っている小麦や大豆、家畜の飼料などを含めて、すべてを国内でまかなうことを目指します。

日本のカロリーベースの食料自給率は現在約38%です。「100%」という数字は、国際的な効率性競争から一時的に距離を置き、国内の生産体制を根本的に、そして強制的に変えるための強力なメッセージとなります。

既存の農業政策からの脱却

100%達成に向けた最も大きな転換は、これまでの「生産を抑える農業政策」から「前向きに生産を支援する農業政策」へと大きく舵を切ることです。これは、戦後長らく続いた米の減反政策を根本から見直すことを意味します。

従来の政策は、米が余るのを防ぎつつ、輸入自由化の圧力にもさらされ、結果として非効率な農業を生み出してしまいました。新政権の政策は、この悪循環を断ち切り、大規模化、効率化を進めることで、農家が意欲を持って生産に取り組めるようにすることを目指します。

この目標は、生産者の所得を安定させることで、大規模化など痛みを伴う改革に対する農家の抵抗を和らげる効果も期待できます。国が責任を持って大規模な投資を行う姿勢を示すことで、農地をまとめたり、効率化を進めたりする改革がしやすくなるのです。

達成への厳しい課題

食料自給率100%の実現には、今の農業が抱える根深い問題の解決が不可欠です。

  • 土地と人手不足の問題 飼料や小麦など、輸入に頼っている作物の国産化を進めるには、農地をまとめて大規模化することが不可欠です。しかし、農業者の高齢化や後継者不足が進んでおり、この改革をどう進めるかが大きな課題です。
  • 外国人労働力政策とのジレンマ 新総裁の政策は、治安や主権を守るため、外国人政策を厳しくする方針です。しかし、農業分野は季節労働などで外国人労働力に大きく頼っています。この政策は、農業の人手不足をさらに深刻化させる可能性があります。そのため、100%達成のためには、外国人労働力に頼らない「スマート農業」技術の導入が不可欠になります。

100%達成のための3つの柱

食料自給率100%という大きな目標を達成するためには、農業を「国の成長産業」に変えるための3つの具体的な手段が必要です。

農業の効率化と構造改革の加速

生産性を向上させることが、目標達成の鍵です。そのためには、農地を大規模にまとめたり、農作業を外部に委託したりして、経営規模を大きくすることが重要です。特に、国際競争に勝つためには、農地を大きく区画整理し、効率を上げることが欠かせません。

また、人手不足を補うために、**スマート農業(Smart Agriculture)**技術の導入が不可欠です。IoTやAIを活用して農作業を効率化することで、高齢化や後継者不足の課題を乗り越え、生産性を飛躍的に高めることができます。

輸出強化で「稼ぐ農業」へ

新総裁の農業政策は、国内での生産を増やすだけでなく、海外への輸出も積極的に進めることに重点を置いています。日本の高品質な農産物を海外に売り込むことで、農業を儲かる産業にし、農家のやる気を引き出します。高品質な農産物の開発や、それを支える輸送・保存の仕組みづくりも、この戦略の重要な一部です。

サプライチェーンの強化と国内生産体制の確立

飼料や肥料の輸入に頼りきっている現状を変えることは、100%目標達成の最大の難関です。

  • 飼料の国産化:家畜の飼料となるトウモロコシなどを、国内で栽培した飼料米に切り替えることを促します。
  • 肥料の国産化:国際的な価格変動に影響されないよう、国内での肥料開発やリサイクル技術に大規模な公的投資が求められます。

これらの改革を進める一方で、地域ごとの特性を考慮することも重要です。競争力を重視する大規模な農地と、地元の消費を支え、緑の空間として機能する都市近郊の農地とでは、それぞれに最適なスマート農業技術を導入する二極化戦略が必要となります。

政策実現の厳しい道のり

高市新総裁が描く「国力」強化のビジョンは壮大ですが、その実現には、政治、財政、そして国際関係という多方面で、多くの困難が待ち受けています。

少数与党という政治の壁

高市新総裁は、与党が衆参両院で過半数を割った厳しい政治状況の中で政権を運営しなければなりません。憲法改正や食料100%達成といった長期的な目標を進めるためには、野党との協力が不可欠です。このため、政策がなかなか進まず、立ち往生してしまう可能性も指摘されています。

連立を組む相手として、保守的な国民民主党が有力視されています。国民民主党は、物価高対策や減税といった短期的な政策を優先するよう求める可能性があります。この政治的な制約により、本来最も重要であるはずの、痛みを伴う長期的な構造改革(農業やエネルギーの改革)が遅れてしまうリスクを抱えています。新政権の成功は、目先の政治課題をクリアしつつ、同時に「国力強化」という長期ビジョンを見失わない、そのバランス感覚にかかっています。

財源確保と財政の課題

食料自給率100%達成のための大規模な農業改革や、エネルギー安全保障への巨額の投資には、国の積極的な財政出動が必要です。エネルギー分野では「GX経済移行債」(20兆円)が使えますが、農業分野への公的投資の財源をどう確保し、日本の膨大な借金とどう両立させるかが大きな課題となります。

国際的な摩擦と外交への影響

食料自給率を100%に引き上げるという目標は、国内生産を優先するため、輸入品にかける関税を高くしたり、輸入を制限したりすることにつながる可能性があります。これは、自由貿易を推進する国際的な約束(TPPなど)と矛盾します。

この野心的な目標を追求することは、農産物を輸出している国との外交的な関係を悪化させるリスクをはらんでいます。日本は、国内の生産力を強めることと、国際的な協調を保つことという、二つの相反する要求の間で、慎重な舵取りが求められます。

日本の未来を賭けた挑戦

高市新総裁の「挑戦で拓く新しい日本」は、これまで日本が歩んできた経済効率性や国際協調を重視する路線からの、明確な転換点を示しています。この政策は、自立と強靭さを重視する「国力」強化という一貫した考えに基づいています。食料自給率100%という目標は、この考えが最も具体的かつ大胆に表れたものであり、不安定な世界情勢に対する日本の「保険」戦略という意味を持っています。

この目標を達成できるかどうかは、農業、エネルギー、経済のすべてを「安全保障」の視点から根本的に変える、大規模な構造改革をやり遂げられるかにかかっています。特に、これまでの生産抑制政策をやめ、スマート農業を軸に効率化を進めることが不可欠です。

しかし、新政権は政治的に不安定な少数与党という基盤で、この長期戦略を実行しなければなりません。連立維持のための短期的な政治的な駆け引きが、長期的な構造改革の足かせとなり、「戦略の停滞」を引き起こすリスクがあります。

日本の未来は、この挑戦の行方にかかっています。この挑戦を成功させるためには、国民に多額の初期投資や、その後の物価上昇などの負担をどう説明し、理解を得るか。そして、国際的な摩擦と国内生産力の強化のバランスをどう取るかという、政治的、財政的、外交的な難題を乗り越えることが求められます。食料自給率100%目標は、単なる農業政策ではなく、自立した「新しい日本」を築くための国家の意志が試される事となるでしょう。

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