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オオルリシジミの生態から見える、「農」がもたらす自然環境への影響

皆さんはオオルリシジミという蝶をご存じでしょうか?
オオルリシジミは長野県と九州で生息が確認されている蝶の一種で写真は熊本県阿蘇市で撮影されたものです。そしてこのオオルリシジミは絶滅の危機に瀕している状態で、自然保護団体などが積極的に保護活動に取り組んでいます。

しかし何故オオルリシジミは絶滅の危機に瀕しているのか?そこには人の農業活動の衰退に大きく関係があります。
今回はオオルリシジミと「農」の関係から伺える、自然と農の営みの関係を覗いてみましょう。

目次

オオルリシジミの生態と現状

オオルリシジミはチョウ目   シジミチョウ科に属する蝶の一種で、名前の通り羽の色は瑠璃色で大型のシジミチョウです。1年に一度、5月中旬〜6月中旬に成虫が現れ産卵します。
環境省によると九州には阿蘇、九重のごく限られた地域に生息。しかし1969年以降九重山系では確認が見られず、阿蘇地域でも年々個体数が減っています。

そしてオオルリシジミの幼虫の食性が非常に特徴的で、マメ科植物のクララの花と蕾のみを食べます。

しかしこのクララはマメ科植物ということもあり草丈の短い植物です。そのため草丈の高い植物が多く生息している環境では自生が難しいのですが、そのクララが生息しやすい草原環境は人の農業活動によって維持されてきました。

農業による草原環境の維持と、オオルリシジミの関係

オオルリシジミが数を減らした理由としては、草の刈り入れ・放牧・野焼きといった農業活動が活発に行われなくなり、クララが自生可能な草原が数を減らしたからとされています。

前述のとおりオオルリシジミの幼虫はクララしか食べません。つまりクララの数の減少はオオルリシジミの減少にも繋がります。しかし何故草の刈り入れなどが行われなくなったことで草原が維持できなくなり、クララが自生しにくくなるのか?そこについて説明します。

草の刈り入れ

クララは前述の通りマメ科植物のため草丈は低い植物です。そして草原にはクララよりも草丈の高いススキやカヤも生息していて、背丈の高い植物の生息数が増えると、当然クララの自生が難しくなります。
伝統的な農法として草原のススキを家畜の飼料とするための、草の刈り入れなどが行われることで、ススキが優勢の状況を抑えクララが自生しやすい草原環境が維持できます。
またオオルリシジミも草丈の高い植物が減ることで、クララを発見しやすくなり産卵が行いやすくなります。
逆に刈り入れを行わなければ草丈の高い植物が増殖を繰り返し、草原環境が崩れるのです。結果的にクララの数の減少し、オオルリシジミの減少に繋がります。

放牧

草の刈り入れ以外の方法として、除草と家畜の育成を両立できる放牧という手段もあります。
少し話は逸れますがクララは有毒成分を含んでいます。名前のクララの由来もクララを口に入れることで眩暈がする、つまり「クラッとくる」といった所からきています。
そしてメカニズムは不明ですが家畜を放牧すると、ススキや他の植物は口にするものの本能で気づいているのか、クララは口にしないのです。
ある意味自動的にクララを残しオオルリシジミにとって生息しやすい草原環境が維持できます。

野焼き

野焼きを行う目的は草の刈り入れの時に邪魔になる枯草や草丈の高い植物の除去、そして家畜が好むイネ科植物の成長を促すためとされています。主に3月の春に行われる野焼きですが、オオルリシジミの生存率を高める効果があるとされています。
オオルリシジミの死亡要因としては、蝶や蛾の卵に寄生する寄生蜂による影響が挙げられます。寄生蜂に寄生されるとオオルリシジミは卵から羽化できずに死亡してしまいます。
しかしこの野焼きを春に行えば寄生蜂の発生を抑え、オオルリシジミの生存率が上がる効果が、近年の研究で明らかになっています。

まとめ

昨今の農業の機械化により前述の項目で説明した農法自体衰退化を辿り、結果的にオオルリシジミはその数を減らしていきました。また離農者の増加や経済的に放牧や野焼きが難しいといったことも、よりオオルリシジミの減少を加速させています。
そのため大学などの研究機関や自然保護団体がボランティアで草の刈り入れや野焼きを行い、クララの苗を植えるなどの保護活動を行っています。
このように「農業」は食料を生産する人の営みであると同時に、自然環境と密接にかかわりがあることが、このオオルリシジミの生態や状況を通じて伺うことができます。

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