インタビュー メロン農家・寺坂祐一さんの考える「感動を生む農業」とは?

公開日: : Humans of 農業

今回のHumans of 農業の主役は、北海道中富良野町にある寺坂農園の代表・寺坂祐一さんです。寺坂農園のメロンはリピーターも多く、毎年予約で完売してしまうほどの人気。栽培したメロンや野菜は、自営の直売所での販売のほか、インターネットによる通信販売で全国へと発送しています。YouTubeやtwitterなどのSNSを駆使しながら、年商は1億をも突破する実力派の経営者でもある寺坂さんに、人生で得た教訓や成功の秘訣を伺いました。

どうして農業の道を選んだのですか?
—————家族による洗脳ですね(笑)。生まれながらにして祖父の田畑が身近にあったので、農業以外の道は考えていませんでした。農業高校へ進学したのですが、もう『ビーバップハイスクール』の世界で。勉強にならない環境だったんですけど、卒業して農家を継ぐとなった時に「これはまずい」と思った。それで、卒業後に自家での農営をしながら、農業特別専攻科という、より専門的な知識を学ぶ学科を受講して、必死に勉強しましたね。そこで、恩師に「メロンをやらないか」と声をかけられたのが、メロンと出会うきっかけでした。

恩師の一言がターニングポイントに?
—————そうですね。1つ目のターニングポイントが、メロンとの出会いでした。長雨でも肥料をやり過ぎてもダメになる…メロンは栽培が難しいからこそ逆にハマってしまいまして。当初は失敗続きで、お金は残らないが経験は残るって状態でした。そして、2つ目のターニングポイントは、直売所を開いたことです。お客様からの反応で、それまでの人生でほぼ初めて「褒めてもらえた、認めてもらえた」との感覚を味わいました。

そもそもなぜ直売所をやろうと?
—————20代後半に入ってデフレ経済が始まってしまって、売り上げが上がらず絶望しかけていましたね。でも、ちょうどその頃結婚したばかりだったのもあり、自分の稼ぎでなんとかしなきゃと、参考になりそうな本を読んだり、直売所を実際に経営している方の元に話を聞きにいったりしました。父親や土地を所有していた親戚からは猛反対にあったし、農業という共同世界で他と違うことをするのには勇気がいりましたけど、頑張って説得しました。

オープンしてからは順調でしたか?
—————いえいえ、開店して3日くらいお客様はいませんでしたよ。でも、急にぽっと入ってきてくださったお客様が「ここのメロンは美味しい!」と6万円分くらい買っていってくださって。徐々にお客様が来てくださるようになりましたね。とは言っても初年度は直売所の売り上げは100万ほどで、まだまだ出荷での収入の方が多かったです。でも、開店した当時から“通販“は意識していました。国道沿いとは言っても人通りは少ないですからね。一度来店してくださったお客様にはダイレクトメールを送ったりもして。そして31歳の時にはWindows98のHPビルダーで自社のHPを作成しました。すごく苦労しましたよ(笑)。

ついにインターネットでの通販がはじまりましたね。
—————世界が一気に広がりました!日本中すべての方に届けられるようになりましたからね。

ここからは、寺坂さんの農業に対する姿勢をうかがっていきます。率直にメロン栽培の面白さはどこにあると思いますか?
—————とにかく、難しいところですね。やっと掴めてきましたけど、天候・品種によって全く違う。すごく奥が深い。育てた人によっても味が変わってきますから。保温しているシートを開けるタイミングが30分違うだけで全滅してしまうこともある、後で取り戻しがきかないですよ。人間の赤ちゃんと同じで、気が抜けない。付きっ切りですね。

毎年収穫が終わると達成感で「もうメロンはいいか」とも思うんですけど、不思議な事に冬になったらまた育てたくなるんです(笑)。

寺坂さんのメロンは、愛情たっぷりで本当に美味しそうですよね。

——————ありがとうございます!毎年、年明けからもう予約をいただいて、3月には本格的に注文がきます。収穫は6月にはじまりますが、7月のお中元には注文のピーク、8月の駆け込み需要でもう完売します。完売になるその瞬間にも、畑には6,000玉ほどのメロンがある状態ですけど、「それはもうお客様のものだから」とスタッフみんなで声をかけあって、その後の作業も慎重に進めています。

メロンの他にも、アスパラガスやトウモロコシなどの野菜も育てていらっしゃいますが、栽培する野菜を決める基準は?
——————第一には、お客様が喜ぶものを作るようにしています。それって、実はインターネットの“検索に強い野菜“なんです。例えば、アスパラガスってキーワードは強いんですよ。本来はメロン1本でいきたいのですが、仲間の農家さん達ってみんなテレビを嫌がるんですよね。それで、取材したいって相談がうちにきたりして…、それならうちでアスパラガス作っちゃおう!と。経営判断で困った時は、お客様が喜ぶ選択をする。アスパラにしてもトウモロコシにしてもそうやって決めてきました。

でも今年はじめたミニトマトはちょっと違います。「ほれまる」という新品種なんですが、これがとにかく美味しい。メロン栽培と時期や作業が被るので大変ですが、美味しすぎたので始めました(笑)。

では、農業で大切にしていることは?
——————栽培技術です。美味しいだけではなく、感動・感謝・感激というレベルまでこないとリピートしてもらえない。「やっぱり寺坂農園は違うね」と言ってもらうには、土づくりや技術が重要ですよ。本当に奥が深い。ここまで出来たとの達成感が毎日あります。その努力でお客様にどれだけ喜んでもらえたかは、売り上げに表れますよ。さらに、喜んでもらうには伝え方も大事。お客様はメロンを食べながら物語を感じている…、だからしっかり伝えていきたい。そういう“非効率“こそが感動を生むんですよね。

ズバリ、寺坂農園の強みとは?
—————ライバルっていう概念はないです。うちはみんながやらないような農業をやっているので。ただ自分のやりたい農業をやっている。農作業だけでなく、情報発信や交流も含めて、“農業“。サイトやSNSのコメントはすべて返していますけど、それも農業。嬉しい言葉や励ましの言葉をいただけて嬉しいですし、アンチコメントがあったとしても、それはうまくいっている証拠だと思っています。

今後の夢を教えてください。
—————その質問が来たら困るなと思ってました(笑)。もう充分夢は叶っているんですよ。皆さんがスマホで検索して、この田園風景の中の農園まできてくれる…それだけの反響がある、売り上げもいい、スタッフとの関係性もバッチリ、まさに満たされた状況です。ただ、その時々で見えている風景は違う。3,000万、5,000万、1億と売り上げが伸びるたびに見えるものは変わってきます。もう売り上げは伸ばさなくていいとの方向性でいましたが、有り難い事に今や1.5億の大台です。

強いて夢をあげるのであれば、ドレッシングやピクルスといった加工部門に力を入れたいですね。もう生産は、規模拡大よりも目が届く範囲でお客様に喜んでもらえるものを作る。そして加工部門で、中富良野の野菜たちの違った楽しみ方を探していきたいです。

メロンの栽培技術など“後継“は意識しますか?
—————メロンの育て方はYouTubeの動画を通じても個別に相談がきますが、品種や環境など総合しての判断はできないです。ただうちの農園に来てもらえれば、社員にはきちんと指導します。仲間は増やしていきたいです。

たくさんの名言をいただいておりますが、寺坂さんの座右の銘を教えてください。
—————「迷ったら進め!」。迷っているのは、やりたいから。やったら絶対失敗するんですけどね(笑)。でも失敗したら経験が得られる。そしたら次が楽しみになります。迷ったら進めば、自分の人生楽しめますよ。

「人生」とのキーワードが出てきましたが、まさに最後は、人生で大切にしている事を聞こうと思っていました。
—————売り上げより充実です。今年実践して身に沁みました。この夏も、トウモロコシの出荷でみんなあくせくしていたんですけど、そんな中僕は炭焼き台を持ってきて、トウモロコシを焼いて、スタッフ全員で食べました。

人生の中で一番美味しい焼きトウモロコシでしたよ。毎日の収穫作業で疲弊している中でも、お客様も同じ美味しさや喜びを共有して。僕はそういう農園っていいなって思っているんです。

編集後記
「非効率な事」を楽しんで実践している、寺坂さん。メロンに対しても、個々のお客様に対しても、真摯に対応している様子が窺い知れました。謙虚でありながら探究心を忘れない寺坂さんの営農の姿勢は、私たちの日々の生活の中でも見習いたい要素が散りばめられています。「迷ったら進め!」の精神で進んでいく寺坂農園の今後がより一層楽しみになるインタビューでした。

▼寺坂農園のHPはこちら
https://furano-melon.jp/

 
 

Minami Ota

投稿者:mota

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