フードロスをなくす逆転の発想&ハートフルな第一次産業の取り組み事例を紹介!

この惑星のすべての問題は、愛の枯渇から生まれる。

世の中の問題は、いくらでも複雑に考えられる上に、そうした方が折々での責任転嫁もしやすいように思います。が結局、最後に算出される公式は、シンプルな我が事として自身に返ってくるのが世の常ではないでしょうか。

本記事では、今いちど問題の原点に戻ってみることを提案し、殊に本来の恩恵がもっと享受されるべきであろう第一次産業に目を向けていくものとします。あなたが未来に残したいのは、効率や収益ばかりが重視され、作物も動物も環境までもが不健康になっていく農業ですか?それとも、姿形に色々な個性があって、それぞれに愛や栄養を育み、生き物すべてが互いを活かし合っていける世界ですか?まだまだ小さな種かもしれないけれど、以下では、未来の農へ希望を抱かせるスペシャルな取り組み事例をご紹介します。

農業動物の聖域「ファーム・サンクチュアリ」って?

虐げられる物から可能性を持つ者へ

ファーム・アニマル・サンクチュアリを直訳すると、“畜産動物の保護区”。

この概念は動物レスキューの中でも、牛・豚・鶏・馬などの家畜として生きたひとつの生命を重んじ、最期の自由と慈しみを与える場所を提供するものです。

ファーム・サンクチュアリで終生飼養の主な対象となるのは、次のような境遇を負った動物たちです。

  1. 過酷なファクトリーファーム(工場式農場)から虐待調査により救出、保護された家畜
  2. 安楽死を待つだけの引退馬や障がい馬
  3. 台風(ハリケーン)や洪水などの自然災害で置き去りになった家畜
  4. 飼い主側の生活事情や、病気・怪我などにより捨てられた動物
  5. 家畜市場や食肉処理場から自力で逃げ出してきた動物

サンクチュアリでは動物たちを“個性ある生命”と捉え、生来の自由や尊厳、特別なケアが与えられるのが共通項です。ときに高度な医療やリハビリが必要なケースもありますが、彼らはやがて日光の下でうたた寝をしたり走り回ったり、仲間とふざけ合ったり、リラックスしたりする初めての感触を愉しむようになります。

ほとんどの家畜がその若い生命を削り取られる中、サンクチュアリ内で“年老いた元家畜”の悠然たる姿が見られることは、聖域が持つ可能性そのものといっていいかもしれません。

畜産業界のジレンマ

食肉消費量は国(この場合は経済)の豊かさと因果関係があると考えられており、先進国が開発途上国を凌いで、世界の大きなシェアを占めています(※1)。また米国農務省によれば、世界全体の食肉生産量は2010年までの過去50年間で約5倍に膨れ上がり(※2)、今後も人口増加や低所得国の発展とともに需要が拡大していくと見られています。

このことから、畜産業はとりわけ生産能力やスピードを重視しなければならないのが実情です。安価で大量の餌を家畜に食べさせて早く育て、食肉市場へ需要以上に出荷し、結果として大量の食品ロスを生む悪循環になっています。その内情において動物の尊厳はほとんど無視され、人間本位で無闇やたらな生命利用の世界があります。

現状、劣悪な環境で自らの糞尿にまみれながら、麻酔なしの身体切断や、殴る蹴るなどの虐待を受ける動物がゼロになることはないのかもしれません。しかしながら、これらの問題は私たち社会が強要しているのであり、「安い肉をたくさん食べられること」を善とする消費者意識が昇華し、濃霧のように畜産業界を覆っているために起こります。もはや一頭・一匹・一羽の動物福祉における向上を、人間社会が許容していないためといわざるを得ないのではないでしょうか。

(※1)「世界の食肉需要」https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/10/21/160909x_nozaki.pdf

(※2)「(図1)世界の食肉生産量の推移」

https://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/us/us20081117.htm

私たちが今&将来的にトライできること①

“いのちの食べ方”を見つめ直す

世の中には、糖質制限やカロリー制限食、ベジタリアン食、ヴィーガン食、グルテンフリー、ローフード、マクロビ、一日一食、断食などの多様な食スタイルがあります。どれが正解とは決められませんが、食べ方を変えてみることは、タンパク質やビタミンなどの栄養的な側面からエネルギー代謝、精神状態や意識などの問題を含め、あらゆる気づきを得る機会になります。

「食前になぜ祈りを捧げるのか?」「怒りながら食べた時と感謝しながら食べた時の味の違いは?」など、食品を単一の次元だけで捉えず、いのちと向き合う姿勢を持つことも忘れてはならないでしょう。

フードバンクで食品ロスを削減する

フードバンクとは、「食品の銀行」や「食べ物の仲介者」などを通称とする社会福祉活動です。余っている食べ物と、食べ物が足りていない施設や人をマッチングし、食品廃棄や食費節約などのメリットを互いに享受できる仕組みとなります。

フードバンクではさまざまな食品の取り扱いが可能であり、まるで巨大な1つの冷蔵庫を地域間で使い回すように何度も利用することができます。

ファーム・サンクチュアリを見学&支援する

岡山県発のファーム・サンクチュアリ。

Carr香織さんご夫妻が動物たちへ最初で最期の幸せを願い、いのちの教育を行う聖地。

豊穣の地・南阿蘇にたたずむ馬や鶏、豚などの幸せな“引退施設”。

伝説の名馬やポニーと触れ合える牧場体験の中、お手伝いもできるサポーターを随時募集。リピーターが多い理由は、緑と光と動物に囲まれてアソべる、開放感と非日常性にあります。

規格外野菜の“ものがたり”が価値になる時代へ

ふぞろいの農産物は、なぜ流通しない?

現在、野菜や果物は市場で定められたこれらの「規格」に応じて生産されています。

  • 大きさ(S/M/L)
  • 重量
  • 傷の有無
  • 形状
  • 品質(A/B/C)

分類上の“型”が存在するために、まるでベルトコンベアを流れる工業製品のように均一でなくては市場に出回らないのです。規格を設けるメリットは、農産物が皆バラバラであるよりも型通りな方が「①取引がスムーズになる」「②流通や出荷がしやすい」ことが挙げられます。

また何より、食の安心・安全を求める消費者が、多くは野菜の見た目で判断している点を無視できません。農産物が幾重もの評価を突破するために、それだけ大量の農薬を必要としていることは別にして、です。

農林水産省の調査によると、2019年産野菜(41品目)の全国収穫量は1,340万7,000トンだったのに対し、出荷量は1,157万4,000トンに留まったとの報告がなされています(※3)。これらの差分を名目上の規格外として算出すると、年間約180万トンと全体の13%に及ぶことが分かります。

しかしながら、規格外を理由に味の変わらない野菜を廃棄することは不合理そのものです。今や、そこに含まれるストーリーとともにビジネスに転化する動きが目立ち始めています。

(※3)農林水産省「作況調査(野菜)」https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/#r

「規格外 = NOT 訳アリ」とする逆転の発想

海外では、安売り~高級志向のスーパーいずれもが、規格外野菜を精力的に販売しています。詰め合わせセットであれば中身はお楽しみとなり、環境問題と結びつけて本来の価値で提供されているところも。色や形の違いが生産者と消費者の間でこだわりに変化し、選ぶ・見る楽しみにも繋がっています。

またフランスではユニークな広告を利用した、規格外野菜のブラックマーケットなるものを展開。チグハグな野菜そのものが“違法”とばかりに、まるでいたずらっ子に仕立て上げるような個性の引き出し方に成功しています。

日本でも水面下での取り組みが進んでおり、一般的には見た目を問わない原材料として商品のバリエーションを増やし続けています。例えば、食べられる化粧品や野菜の染料で染め上げるベジタブル衣料、「おやさいクレヨン」なども、廃棄予定だった農産物が形になったものです。規格外野菜があることを前提としたこれらの商品開発により、アイテムとしての付加価値やお金では換えられない物語を享受し合えます。

私たちが今&将来的にトライできること②

規格外野菜のブランディング事業を応援する

規格外野菜は長らく農産物の影として、あまりに膨大な量の廃棄がなされてきました。しかしながら規格とは効率上のレッテルであり、単に見方を変えるだけで輝き始める“その先”があります。以下の2社は、規格外ビジネスにおけるモデルの展開例です。

オイシックス・ラ・大地株式会社が提供する、有機野菜などの定期宅配サービス「らでっしゅぼーや」。そこで一際目を引くのが、多彩な姿形をした「ふぞろい らでぃっしゅ」がどのように生まれるのかをレポートしたコラム・サービスです。個性たっぷりのレシピとともに販売される「ふぞろい食材おためしセット」は、大人気の限定品となっています。

「タベモノガタリ株式会社」は、規格外野菜の配送・販売などを行う「八百屋のタケシタ」の運営母体。フードロス問題や農産物流通の最適化を図るタベモノガタリは、野菜や農家が持つキャラクター性も重要視しています。規格外であっても地元の安全な野菜であることを謳えば、一般の規格野菜より高い価値を認めてもらうことも可能になるのだそう。

規格外の野菜を味わったり、その背景を調べたりしてみる

消費者の意識が変われば、農産物を美しくするための作業が不要になっていくと考えられます。農薬の使用量が減れば、農家が抱える過重労働や健康への害を和らげることも可能になります。マーケットに色ムラや傷のある野菜が並ぶまでには、他者に寛容である社会の実現を待たなくてはならないかもしれません。が同時に、そんな売り場があればとても愉快で、人や野菜がともに生命力を強く活かし合っている未来を連想させます。

「何をもって安全性の指標とするのか?」「何を最も重視すべきか?」が消費者の中でハッキリしていれば、規格の鉄壁が少しずつ打ち破られていくに違いありません。

後記

50億部ともいわれる大ベストセラーである聖書は、愛の書として読むこともできれば、人生訓やイエス・キリストの物語として嗜むこともできます。

「互いに愛しなさい」と説く彼の言葉が世界中に響き渡ったのは、彼の辿ってきた稀有なストーリーがあったからこそかもしれません。

物語は人の心を打ち、国の歴史を変える力を持っています。

住みよい国・惑星を形づくるためには、あらゆる生き物のストーリーを想像していく精神の豊かさや、お互いの物語を尊重し合う姿勢が何よりも求められているのです。

 
 

A.mass

投稿者:mass

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