【原材料が高騰】 日本製メーカーの農機具将来見込みと対策

原材料価格の高騰は、日本製の農機具産業にとって大きな逆風となる可能性がありますが、同時に変化や転換のチャンスも孕んでいます。以下、現状と将来の見通し、そしてリスク・対応の視点を整理してお伝えします。
現状の状況:課題点が複数重なっている
まず、原材料高騰が農機具業界(および関連する資材・部品分野)に与える主な影響要因を確認します。

要因 | 内容・影響 |
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原材料・資材コスト上昇 | 鋼材、アルミ、プラスチック・樹脂、電子部品、センサー類など、農機具には多種多様な素材が使われています。これらの価格上昇が製造コストを押し上げます。 |
輸入部品への依存 | 国内で全ての部品をまかなえるわけではなく、一部部品・素材は海外からの調達に依存しているケースも多いです。輸入コスト・為替リスクが影響します。 |
為替変動・円安 | 日本は資源や素材を輸入に頼る部分が大きいため、円安になると輸入コストが跳ね上がります。実際に円安の長期化がコスト負荷になっているという指摘があります。 |
物流・輸送コスト | 部品や完成機械の輸送、部材の国内移送にもコスト上昇圧力があります。 |
技術高度化・電動化・自動化のコスト | スマート農機、センサー、ICT 統合、自動運転化などの技術導入には追加コストがかかります。これらは将来性のある投資ですが、短期的には価格上昇要因となり得ます。 |
農家の導入意欲・投資余力の制限 | 農家側から見ると、機械価格が高くなると更新・導入のハードルが上がります。収益性との兼ね合いで導入が抑制される可能性があります。 |
こうした背景から、農機具の価格も上昇傾向にあるという報告が複数あります。たとえば、中型トラクター・コンバインなどで「2020年比で 10~20% 程度の上昇がある」という事例も出ています。
また、農業用資材(肥料、燃料、被覆用ビニール、農薬、飼料など)も高騰しているため、農家のトータルコスト負荷が軒並み上がっており、機械だけでなく運用コストも重荷になるという構図です。

将来展望:縮小?停滞?成長?複数の可能性が混在
原材料高騰だけで将来が一義的に決まるわけではなく、政策、技術革新、需要構造、国際環境など多くの変数が絡み合います。以下に、いくつかのシナリオと見通しの要素を挙げます。
成長見通しも存在する(ある程度の拡大)
- 市場分析レポートでは、日本の農機具市場(あるいは農業機器市場)は今後も成長余地があると見られています。たとえば、2025年時点で約 39 億ドル、2030年には 51 億ドル規模に成長するとの予測もあります(年率約 5.5% 成長)
- 他のレポートでは、2025〜2033年の期間で日本の農業機械市場が年平均成長率約 2.5% で推移すると見られているものもあります。
- 特に、スマート農業、自動運転・遠隔操作、省人化、電動化といった技術革新の分野が今後の主戦場になるとの見方があります。 ノウキナビ+3モルドールインテリジェンス+3IMARC Group+3
- 労働力不足・高齢化農業の進行によって、機械化・自動化への需要拡大圧力が強まる可能性があります。
しかし、このような成長見込みが実際に手元に利益をもたらすかどうかは、上記のコスト上昇をどのように吸収・調整できるか次第です。
リスク・あるいは停滞・縮小シナリオも無視できない
- 高コスト構造を製造各社が転嫁できなければ、利益率が圧迫され、事業継続・投資余力に制限が出る可能性があります。特に中小メーカーや過度に輸入部品に依存する企業は脆弱です。
- 農機導入のコスト上昇が、農家の導入抑制を招くと、需要が伸び悩む可能性もあります。
- 技術導入コスト・研究開発投資が思うように回収できなければ、参入障壁や資本制約が厳しくなるかもしれません。
- 国際競争力の低下:海外メーカーが安価な部材・生産拠点を持っている場合、それらとの競争で価格競争力が厳しくなる可能性があります。
- 環境規制・脱炭素政策対応コストも将来的に負荷になりうる。

中間シナリオ:調整と淘汰を伴う再編
もっとも現実的なのは、産業として「適応・再編」されながら成長分野を取り込む進化の道です。たとえば:
- 高付加価値・差別化型モデル(スマート農機、無人機、遠隔操作機器など)への強化。
- 部品の内製化、サプライチェーンの見直し、国内調達率向上。
- モジュール化設計・汎用部品化によるコスト低減。
- リース・シェア・レンタルなどの導入形態の多様化で、農家の初期投資負担を軽減。
- 政府の補助金、助成、税制優遇、公共投資との連携など政策支援の活用。
実際、農機具業界でもこうした動きがすでに見られるという報告があります。将来的な価格上昇はあるものの、電動化・自動化機器ではプレミア価格がつく見込みで、汎用モデルや中古・シェア市場の拡大で導入コストの平準化が図られる可能性もあるという予測もあります。 ノウキナビ
また、トラクター単体の市場予測では、2024年から2030年にかけて年率 1.11% 程度の成長が見込まれているという分析もあり、完全な衰退シナリオではないことを示唆しています。 Arizton Advisory & Intelligence+1

提言・注目すべきポイント(農家、メーカー側双方視点で)
将来を見越して備えるなら、以下の視点・戦略が鍵になるでしょう。
- コストモニタリングと設計改善
素材・部品コストや物流コストの変動をリアルタイムで把握し、設計段階からコスト耐性の高い構造・代替素材設計を意識する。モジュール化や標準部品化も有効。 - サプライチェーンの強靭化・多様化
輸入依存先の見直し、国内部材会社との連携強化、代替素材の探索など。サプライチェーンの冗長性を持たせてリスクを分散。 - 技術革新への投資
自動運転・IoT・センサー制御・遠隔操作などの技術は将来的な差別化・付加価値源泉になり得る。ただし、投資回収性・導入コストとのバランスが重要。 - 導入モデルの多様化
リース、シェア、レンタル、サブスクリプション型など、初期投資を抑えられる利用形態を広げ、導入のハードルを下げる。 - ブランド力・信頼性強化
国産の信頼性、アフターサービス体制、部品供給性、修理ネットワークなどを強化して、価格以外の付加価値を高める。 - 政策の活用
政府補助金、減税措置、研究開発支援制度などを積極的に活用する。産業政策や農林水産政策との連動も見逃せません。 - 市場・需要ニーズの変化注視
農業分野そのものが変わっていく(作物構造変化、スマート農業化、労働力構成変化など)ので、それに合わせた機械・サービス展開が求められる。
新品・中古を問わず農機具の購入をお考えの方は、ぜひご相談ください。
\ ノウキナビ農機具/