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外国米の侵攻で日本の「米開国」は暗雲の道?国産米の課題は新たな次元へ

農は国の基。
国家の土台は農が築くものであり、田園風景で魅せる美しさこそが発展の象徴であると問いた言葉です。
我が国では、温暖湿潤な気候がイネの栽培に適していたことから、とりわけ稲作(米)は国の基と言い換えられるかもしれません。ところが、お米をとりまく事情は年々先細りしており、水稲の作付面積・収穫量はともに減少の一途を辿っています。
瑞穂の国・日本が米作りから離れ、外国米との付き合いが始まったのはいつ、どのような経緯からなのでしょうか。

この記事から読み解けるその他の要点は、以下の通りです。

  • 世界中で生産されているお米の種類
  • 農業政策の歴史と外国米の輸入(関税化)までの流れ
  • 外国米の行方と販売状況
  • 米農家が直面している生産課題
目次

外国米の特徴・日本米との違いについて


世界でのお米の生産量は、中国を筆頭にインド、インドネシアとアジア圏で約90%を占めています。
それ以外にもアメリカやヨーロッパ、アフリカを含む世界中で、約10万種以上のイネが栽培されてきました。
お米の種類は大きく、以下の「ジャポニカ米」「インディカ米」「ジャバニカ米」に分かれています。

種類(区分)特徴
①ジャポニカ種(短粒種~中粒種)日本型イネと呼ばれる品種で、日本・朝鮮半島・中国東北部・台湾などが主な栽培地域。粒が短い円形で、水分が多く、弾力・つや・甘みがある。
②インディカ種(長粒種)世界全体の生産量のうち約80%以上を占める、通称タイ米。アミロースの含量が高いため、硬くパサパサした食感と独特のにおいが特徴。代表的な栽培国はインド・中国中南部・東南アジア・アメリカ。
③ジャバニカ種(大粒種)インドネシア・中南米・イタリア・スペイン・アフリカなどでわずかに生産されている、ジャポニカ米の変異種。幅の広い大粒で、味はあっさりとしていて粘り気がある。

コシヒカリなどの銘柄を含むジャポニカ種は、「口中調味」を食文化とする和食との親和性が高いお米です。口中調味とは、白米とおかずを交互に口にしながら、様々に変わる味を楽しむ食べ方のことです。

一方、海外では料理を1つずつ食べ終えるコーススタイルや、パエリア・ピラフなどのように副食材と混ぜて調理するのが主流となっています。外国米を「まずい」と感じる日本人は少なくないものの、食べ方を海外由来に似せるだけでもおいしくなって印象がグッと良くなるかもしれません。

外国米と変わりゆく日本の米生産


かつては輸入米を制限していた日本も、冷害や食糧管理制度の麻痺をきっかけに、状況に応じた対応措置を施してきました。
本項目では、外国米を輸入するに至った農政の歩みとともに、米農家が直面している問題に焦点を当てていきます。

「米増産時代」から「米鎖国解禁」まで

農村の貧困対策と戦中の食糧不足を解消するため、食糧管理制度が制定されたのは1942年のことです。制度下では、政府が生産者からお米を高く買い入れ(生産者米価)、消費者に安く売る(消費者米価)仕組みが成り立っていました。

さらに、品種改良や機械技術の近代化により農業生産量が飛躍的に増加。一方で、食の欧米化により米の年間消費量が減少していく中、1967年には余剰米(米余り)が出始めたことへの政策の転換が図られます。
反対に、古米の在庫処分と生産抑制が大命題となり、以降は作付面積の削減を要求する減反政策が行われました(2018年に廃止)。

こうした紆余曲折を経て、食糧管理制度が限界を迎える大きな要因になったのは、1993年の「平成の米騒動」です。記録的な冷夏に見舞われ、国産米が一気に不足したことで、日本政府は国内のみでの管理体制を大転換させる必要性にかられます。
一転して外国米の輸入に踏み込み、今日の自由貿易がもたらす本格競争のレールへと繋がっていきました。

今さら聞けない?なぜ外国米を輸入し続けるのか

お米の輸入が規制緩和されたきっかけは、ガット・ウルグアイ・ラウンドと呼ばれる国際交渉に合意したことです。

ガット(GATT)は貿易の自由化を促進するための協定で、関税水準を引き下げることを交渉の課題としています。この協議で、日本はお米の輸入を延期して例外的措置を求めたため、代償としてのミニマム・アクセス(最低輸入機会)を負うように取り決められました。

ミニマム・アクセスとは、「低関税に設定された最低限必要な輸入枠」のことで、当時の国内消費量のうち4%(その後6年間で8%に拡大)の輸入量を認める協定です。
このいわゆるミニマム・アクセス(MA)米は、正確には全量を輸入する義務はなく、「輸入機会の提供」に過ぎない事実が指摘されています。つまり、国産米の生産実績に応じて輸入量を増減させても構わないということです。

日本農業を守るための交渉に転換すべきだとの要求が集まる中で、1999年には「コメの関税化(輸入化)」が開始されています。341円/kgの高関税により枠外輸入は年間100~200トンに収まっていますが、代わりにMA米を義務と称して、年間77万トンを輸入し続けています。
日本では余剰米に頭を抱えていても、「例外なき関税化=自由貿易」の名のもとに受け身にならざるを得ない歴史的事情があったといえそうです。

MA米の国別輸入量と使いみち

平成30年度のMA米の輸入総量は76.7万トンであり、そのうち国別の輸入先は数量順に以下の顔ぶれとなっています。

アメリカ:35.9万トン
タイ:31.6万トン
中国:6.9万トン
オーストラリア:1.5万トン
その他:0.8万トン

国別の輸入量は、国内のニーズや輸出国の生産量を考慮して、取り決められているものです。
また、過去の輸入数量1,736万トンにおけるMA米の販売状況は次の通りです。

[平成7年4月~令和元年10月末の合計]
輸入数量:1,736万トン
主食用:154万トン(おもに中食[※1]・外食用)
加工用:520万トン
飼料用:653万トン
援助用:329万トン
在庫:60万トン(飼料用備蓄35万トンを含む)

[単年度の平均的販売数量]
主食用:1~10万トン
加工用:10~30万トン
飼料用:30~40万トン
援助用:5~20万トン

外国米の多くは、みそ・焼酎・米菓などの加工食品の原料や家畜の飼料、海外への食糧援助用です。低価格の加工用品向けに国産米を原料として使うことは難しいため、年間約10~30万トンの固定需要があります。

また主食用の輸入枠も上昇傾向にあり、安値を謳う一部スーパーや外食店でも輸入米の取り扱いが増えてきています。国産米の需要減をきっかけに、外国産の新顔が日本の食卓にのぼる日はそう遠くないかもしれません。

国産米・米農家が直面している問題

外国米の存在感が日々強まっていく中、日本の米農家はまさに「米作って飯食えぬ」という白旗状態に陥っています。農水省は2018年に減反廃止として、自己責任による米生産に政策転換しました。

が、毎年10万トンずつ需要が減少していることに加え、コロナ禍の2021年は事実上過酷な減反拡大を迫っています。米価の下落が懸念されるため、米農家は主食用米から飼料用米(エサ米)への転作や、他作物の生産を誘導されている状態です。飼料用米を作付けすると収量に応じた助成金を受け取ることができますが、「経営を立て直す以前に限界が来ている」との声も上がっています。

「お米は過剰」の前提を崩さない限り、生産者のもとに入る利益は減り続け、深刻な赤字生産に陥る米農家が今後も減ることはなさそうです。


[※1]飲食店などで食事をする「外食」と、家庭内で素材から調理した料理を食べる「内食」の中間に位置する食事形態。「中食」とは、調理済みの食品を持ち帰って自宅などで食べることを指す。

消費者と農政による国産米の下支えを

国家の基礎である農、殊に稲作を守っていくには消費者側の意識向上が欠かせません。国産米の品質やこだわり、地域ならではの農法に関心を抱き、地産地消を実践することも農村への貢献となります。食料安保の一環として、輸入米よりも国産米を金銭面において優遇し、高い次元での共助を行う姿勢が必要です。

また、米政策においては構造的な改革のもと、問題意識の共有と議論の積み重ねが欠かせません。国内の米市場に不利なペナルティーを被らないよう、従来の交渉を改めていく政治の覚悟が求められます。

後記

農業や稲作は国興しの土台であるからして、国家の問題が同一の次元に集約されているように思われます。
日本の歴史や文化の源である米生産を保持していくためには、確かな枠組みと技術、そして人々の精神が伴っていなければ、根本の課題解決に至らないのではないでしょうか。

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